文明は、古来より港を通じて伝わった。交易が盛んな良い港には、多くの文物が集まると同時に、斬新な知識が渡来して人々の独創性を刺激した。
良い港は、瀬戸内海や地中海のような波穏やかな閉鎖性海域で発達した。このような海域は、外海との海水交換が少ないことから、一度、水質の悪化を招くとその回復は容易ではない。近年、閉鎖性海域の環境汚染が注目されるようになってきたが、この状況は、沿岸人口が増加し新たな開発の圧力が高まる中で、一層顕著かつ深刻化してきている。
1992年にリオでが開催された「環境と開発のための国連会議」では、「アジェンダ21」−持続可能な開発のための人類の行動計画−、及び「環境と開発に関するリオ宣言」が採択され、1.海洋における 秩序の構築、2.地域的な協力の枠組みの構築、3.個別汚染物質、4.生物多様性の保全、5.地球環境問題への取組等の視点に立つ重畳的な海洋環境保全を求める機運が高まった。我が国でも、1993年「公害対策基本法」に替わって「環境基本法」が制定され、地球環境保全の一つとして「海洋の汚染」が加えられた。
このような世界の潮流に先んじて、先見性に満ちた活動がすでに神戸市で産声を上げていた。
1990年、第1回世界閉鎖性海域環境保全会議(第1回エメックス会議)は、貝原兵庫県知事のリーダーシップもあって多くの参加者を得て大きな成功を収め、その後、エメックス会議は、ボルチモア、ストックホルム、アンタルヤと開催された。そして、第5回エメックス会議が世界を東回りに一巡して再び2001年に神戸で開かれることとなった。21世紀最初のエメックス会議となるこの会議が、過去10年にわたる研究の集積、取組を総括するとともに、環境の回復と創造という視点から将来の閉鎖性海域の環境保全政策を立てる上で極めて重要な会議となることを期待して止まない。
思えば、この10年の間に、わたしたちを取り巻く状況は大きく変わった。
我が国における環境保全に対する考え方も、当初の水質改善、有害物質対策等の公害対策中心のものから、環境基本計画等に見られるように、生物多様性の保全、健全な水循環の回復・確保、物質循環の促進、豊かな自然との触れ合いの確保など幅広い環境保全を目指すものに変化してきた。また、研究や環境改善に努力を惜しまない新進気鋭の研究者も増加し、各般 の環境関連技術も大きく進歩してきた。加えて、環境に対する市民の意識も大きく変化してきている。
私たちは、このような環境に関する新たな流れを踏まえ、閉鎖性海域が生活、産業等を含む人間と自然との共生の場と再認識するとともに、それぞれの海域の地理的、自然的、社会経済的な条件を考慮しつつ、既存の枠組みを越えて包括的に取り組むことが求められている。
また、共通の課題に向かって国際的なネットワークを強化することが必要である。
環境は、常に保全しなければ自然に良くなることはない。 この意味でこれらの努力は今後も続けなければならない。
財団法人国際エメックスセンタ−に対して、さらなるご理解とご支援を賜わりたいと切に希望するものである。
財団法人国際
エメックスセンター
会長