閉鎖性海域の環境の保全と適正な利用をめざして 公益財団法人 国際エメックスセンター

Home » エメックスとは » ごあいさつ

ごあいさつ

公益財団法人 国際エメックスセンター 会長 鈴木基之

私たちと海

 海は、かつて地球上に生命を生みだした母体であり、海水は地球上のほとんど全ての生物体の生育にとって必要となる多様な物質を含んでいます。私たちは水平線に及ぶ大海の前に立ち、心の故郷としての海、自然の猛々しさを教えてくれる海、食料としての海産物を育んでくれる海、そのほかにも海は人間にとって諸々の恩恵(生態系サービス)を提供してくれていることに思いを馳せ、海とのつながりに感動を覚えます。私たちの気づかぬところでは、巨大な水域としての海は地球上の気候を調整するという大きな機能を果たしていますし、陸上の生物体が依存する淡水は、海から蒸発する水蒸気によって賄われています。

沿岸域の重要性

海の占める面積は地球全表面積の70.8%を占め、海の平均深度は3800mに及ぶとされています。海洋中の多様な生き物を育てる源泉は、太陽エネルギーにより増殖する植物性プランクトンや、藻類であり、これらは主として陸地に接する浅い海において繁殖し、海域の複雑な生態系を支えています。
この重要な機能を持った「沿岸域」は、その占める面積は海の全面積の0.1%程度と推定される僅かな部分です。陸上の人間活動の大きな部分は海と接する陸域で営まれており、沿岸域はその影響を強く受ける場であることは言うまでもありません。 沿岸海域の生態系の保全を、膨張しつづける人間活動といかに調和させつつ行うか、これは人類にとっての大きな課題であります。因みに、過去30年間(1990年以降、ほぼ「平成」の時代)で、世界の人口は1.4倍弱、経済活動(世界総生産)は4倍に増しており、この人間活動の拡大傾向は、しばらくの間、止まりそうにありません。
既に、1990年頃は沿岸域においても特に人間活動の影響が顕著な、「閉鎖性海域」において水質、水環境の劣化は著しく、世界共通の課題として、瀬戸内海を初めとする「閉鎖性海域」の環境管理に関心が高まり、本センターの発足につながっているのです。

センターの役割

本センターは以後30年の間、国際会議として、EMECS会議を2-3年に1度、世界各地の回り持ちで開催し、代表的な閉鎖性海域に関する環境情報、環境管理手法などの国際的な情報共有が図られてきました。
かなりの水域において環境改善が図られ、国際的なネットワークも構築されてきてはいますが、次々と認識され、解決を迫られる海洋環境の課題は、一層重要性を増しております。地球温暖化、海洋の酸性化は海の生態系に関してもボディーブローで効いてくるでしょう。
近年、特に関心を集めている海域のプラスチックごみ問題についても、一旦海域に排出されたものにどう対処するか、容易ではない課題です。
2015年に国連において合意された持続可能な開発目標(SDGs)においても「目標14:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」が設定されています。持続可能な「海域と人間活動との関係」を構想し、現実的、具体的、定量的な目標を設定し、その実施に向けた策を検討する母体として、EMECSセンターの今後の役割も飛躍が求められることでしょう。ご関心をお持ち頂いている皆様のご支援をお願い申し上げます。

2019年7月