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環境省環境研究総合推進費S-13 持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発環境省環境研究総合推進費S-13 持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発

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2016年1月28日

平成27年度公開成果発表会の概要

日時
平成27年11月5日(木)10:00~17:30
場所
WTCコンファレンスセンターRoom A

概要

平成27年度公開成果発表会は、WTCコンファレンスセンター(東京都港区)で開催され、関係する研究者や行政関係者等、約100名が参加した。
講演では、環境省環境研究総合推進費S-13プロジェクト「持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発」に係る平成26・27年度の研究成果についてプロジェクトメンバーから報告があり、今後の研究の方向性等について意見交換が行われた。

主催

環境省環境研究総合推進費S-13プロジェクト、(公財)国際エメックスセンター

講師(講演順)

総  括 S-13プロジェクトについて  柳 哲雄(国際エメックスセンター)

テーマ1 閉鎖性海域・瀬戸内海における栄養塩濃度管理手法の開発

S-13-(1) 栄養塩濃度管理法開発
西嶋 渉(広島大学)
S-13-(2) 干潟・藻場の栄養物質循環・生物再生産に果たす機能の解明
多田 邦尚(香川大学)

テーマ2 開放性内湾が連なる三陸沿岸海域における沿岸環境管理法の開発

S13-2-(1)遷移する沿岸環境監視とそれを応用した沿岸海域管理法開発br /> 小松 輝久(東京大学)
S13-2-(2)森-川-海の栄養物質輸送機構の解明
門谷茂(北海道大学)
S13-2-(3)1森-海の物質輸送に果たす有機物の役割解明
吉村 千洋(東京工業大学)
S13-2-(3)2森-海の物質輸送に果たす有機物の役割解明
西村 修(東北大学)

テーマ3 陸棚・島嶼を含む国際的閉鎖海域・日本海の海域管理法の開発

S13-3-(1)国際的閉鎖性海域の管理法提案
吉田 尚郁(環日本海環境協力センター)
S13-3-(2)1日本海環境変動予測モデルの構築
森本 昭彦(愛媛大学)
S13-3-(2)2日本海環境変動予測モデルの構築
広瀬 直毅(九州大学)
S13-3-(3)日本海高次生態系モデルの構築
郭 新宇(愛媛大学)

テーマ4 沿岸海域の生態系サービスの経済評価・統合沿岸管理モデルの提示

S13-4-(1)生態系サービスの経済評価
仲上 健一(立命館大学)
S13-4-(2)沿岸海域三段階管理法提案
日高 健(近畿大学)
S13-4-(3)人文科学的考察に基づく市民と沿岸海域を結ぶ物語の発見・構築・継承
印南 敏秀(愛知大学)
S13-4-(4)対馬・五島の海洋保護区における漁業活動調整br /> 清野 聡子(九州大学)

テーマ5 沿岸海域管理のための統合数値モデル構築

柳 哲雄(国際エメックスセンター)

総合討論

1.発表

総括 S-13プロジェクトについて

(国際エメックスセンター 柳 哲雄)

この研究では、テーマ1「閉鎖性海域・瀬戸内海における栄養塩管理法の開発」、テーマ2「開放性内湾が連なる三陸沿岸海域における沿岸環境管理法の開発」、テーマ3「陸棚・島嶼を含む国際的閉鎖海域・日本海の海域管理法開発」、テーマ4「沿岸海域の生態系サービスの経済評価・統合沿岸管理モデルの提示」、テーマ5「沿岸海域管理のための統合数値モデル構築」、という5つのテーマを設けている。これらをまとめて協議会に提案し、最終的には「きれいで、豊かで、にぎわいのある持続可能な沿岸海域」を日本で実現して世界に発信していこうとするものである。
「きれいな海と豊かな海はトレードオフの関係にあるのではないか。」といわれるが、栄養塩濃度が適切で、その結果、表層である程度基礎生産があって光が下まで届いて海底付着珪藻や海藻が増えるような海だと、水がある程度きれいで基礎生産が大きく、にぎわいのある健全な海が実現されると考えている。

テーマ1 閉鎖性海域・瀬戸内海における栄養塩濃度管理法の開発

サブテーマ1:栄養塩濃度管理法開発

(広島大学 西嶋 渉)

これまで瀬戸内海では、「陸域からの栄養塩を削減しネガティブな部分を減らす。」という観点で管理が行われてきたが、生物生産からすると一方的に下げればよいというものでなく、このテーマでは健全な物質循環と高い生物生産を達成しつつ環境保全も併せて行うということで取り組んでいる。
本研究では、栄養塩から動植物プランクトンを経てプランクトン食性魚へと至る低次生態系と、魚食魚へと至る高次生態系を繋ぐものとして、プランクトン食性魚(イカナゴ、カタクチイワシ等)に着目している。広島湾での調査では、基礎生産の沿岸域と沖合の生産構造の違いが明らかになった。また、瀬戸内海のイカナゴの個体群構造解析や仔魚移動モデルによる産卵場所や分布範囲の推定などを行った。
今後は、過去のモニタリングデータからの推定を組み合わせることで瀬戸内海の低次生態系の構造の時空間分布を明らかにし、その上で、栄養塩負荷とプランクトン食性魚の変動との関係を整理していく。

サブテーマ2:干潟・藻場の栄養物質循環・生物再生産に果たす機能の解明

(香川大学 多田 邦尚)

瀬戸内海では藻場・干潟の面積はデータをとりだして以降半分以下になった。この浅場の機能や役割を明らかにして今後の環境保全政策に生かしていかなければならない。
生島湾のアマモ場における栄養塩収支について検討を行った結果、無機態窒素は流入と流出がほぼ同じであり、アマモのDIN源は水中、間隙水中、そのほか複数のソースが機能していると考えられた。また、アマモ場のマッピング手法としてサイドスキャンソナーによるマッピング法を開発中である。
新川・春日川河口干潟における調査結果では、有機態の窒素やリンが無機化され、自然の浄化槽としての機能が確認された。
今後は栄養度の高い干潟と低い干潟の比較を行っていきたい。

テーマ2 開放性内湾が連なる三陸沿岸海域における沿岸環境管理法の開発

サブテーマ1:遷移する沿岸環境監視とそれを応用した沿岸海域管理法開発

(東京大学 小松 輝久)

復興の「みえる化」だけでなく海中の「みえる化」も必要で、藻場、塩性湿地、筏のマッピングを行った。モニタリングによりウニの大増殖によるアラメ場の消失などが起こっていることが分かった。また、震災復興で塩性湿地が消滅しつつあるが、これらを面としてとらえるためマッピングを行うとともにモニタリングが重要である。
三陸町、漁業組合、総括班などが参加して、筏の適正配置等について考えるため「志津川湾の将来を考える研究会」を開催しており続けてやっていきたい。

サブテーマ2:森-川-海の栄養物質輸送機構の解明

(北海道大学 門谷 茂)

本研究では、「森は海の恋人」というキャッチコピーについて科学的に解明されていない点が多く、①陸域からの栄養塩類が河川(地下水)を通して海域にもたらされる過程、②沿岸域にもたらされた栄養塩類が、基礎生産過程にどのように分配され、湾内の生物生産を支えているのかを定量化し、③志津川湾の物質循環過程模式図に示す物質循環系を総合的に明らかにすることがミッションである。
研究対象地域の志津川湾において主要3河川水中の窒素栄養塩濃度の時系列変化等を調査し、河川から湾への栄養塩流入量を推定し、湾内の栄養塩現存量を算出した。湾外からの栄養塩流入量を推定するために沿岸用ADCPにより観測を実施した。また、湾内での生物過程を通した再生生産の規模をカキの室内実験により特定するとともにカキ筏にトラップを設け排せつ物などを実測した。
今後、「志津川湾の物質循環過程図」に数値が入っていってよくわかるような図になることを期待している。

サブテーマ3-1:森-海の物質輸送に果たす有機物の役割解明

(東京工業大学 吉村 千洋、代理発表:藤井 学)

研究では、陸域から供給される鉄が沿岸域の生物生産性に貢献するという「鉄仮説」について検証を行う。具体的には、①河川・湾での鉄と有機物動態、②鉄摂取と藻類増殖、③陸域からの流入、について調査を行い、最終的には鉄と有機物に着目した森・川・海のつながりの定量的解明を目指す。
これまでの成果として、河川ならびに湾の鉄・有機物時空間分布を明らかにしつつある。湾内の鉄濃度では鉄制限は確認されなかったが、外洋より高い鉄濃度を湾内で維持する上で、陸域からの供給は重要と考えられる。土壌からの鉄の溶出は土壌有機物の分解程度と関連していた。
今後は、年間調査で得られた水・土試料の分析とデータ解析を継続し、フラックス評価、有機物と鉄の起源解析、鉄の溶出と土壌性質の関係性評価を行う予定である。

サブテーマ3-2:森-海の物質輸送に果たす有機物の役割解明

(東北大学 西村 修、代理発表:坂巻 隆史)

本研究では、環境管理上の各種問題への対応の適正化のために必要な有機物動態に関する科学的知見を提示する。
カキの生産に寄与する有機物の起源については、志津川湾の様々な粒状有機物の脂肪酸組成の分析結果で、付着物は珪藻由来、河口付近では陸上由来と細菌由来が多く、カキの体の脂肪酸組成では植物プランクトン由来の脂肪酸が多くエサにしていることが示された。粒子状有機物の沈降と分解過程と酸素消費においては、カキのフンによる酸素消費速度を測定したところ、カキの年齢とともに有機炭素含有率が上昇して酸素消費速度が高まるという結果であった。
今後は、異なる起源の粒状有機物のカキ生産への寄与、粒状有機物の化学組成と酸素消費の関係、数値シミュレーションのモデルパラメーターの提供などを行う。

テーマ3 陸棚・島嶼を含む国際的閉鎖海域・日本海の海域管理法の開発

サブテーマ1:国際的閉鎖性海域の管理法提案

((公財)環日本海環境協力センター 吉田 尚郁)

日本海は、中国・韓国等と連携した国際的管理が必要であり、東シナ海が日本海に及ぼす影響、海水温の上昇が日本海全体の生態系に及ぼす影響に焦点を絞って研究を進めている。
サブテーマ1では、低次生態系モデル、高次生態系モデルを動かすうえでのデータセットの整備を行ったが、今年度は将来予測を進めるうえで必要な変動シナリオを、中国・韓国・ロシアの状況も踏まえて考えていく。変動シナリオでは、気候変動シナリオ、栄養塩負荷、南水北調といった、3つの変動シナリオの作成し、このシナリオに基づいて他の3つの生態系モデルを動かしていく予定である。
管理法を考えるうえで、日本海の水の起源となり得る5つの要素をベースに、日本海を5つの海域分けをし、水塊特性に合わせた監視・管理を検討するとともに、化学トレーサーを使って観測を進めている。最終的には日本海の管理をどういう形で行っていくのかを検討していきたい。

サブテーマ2-1:日本海環境変動予測モデルの構築

(愛媛大学 森本 昭彦)

サブテーマ2では、東シナ海の海洋環境が大きく変わり日本海へ流入する栄養塩が変化することに伴う日本海の低次生態系の応答を明らかにする計画である。
昨年度に九州大学の物理モデルと低次生態系モデルを結合して作ったモデルを今年度改良し、再現性をチェックしたところ、表層のクロロフィルについて、人工衛星で観測された値とモデルの結果がよく一致しておりモデルの再現性が向上したことが示された。また、対馬海峡から入る栄養塩を変化させた場合どうなるかという感度実験では、夏から秋に入る栄養塩量が増えた場合次の春の日本海北部のクロロフィル量が増加するという結果となった。
今後は、シナリオに沿った実験がこのモデルにより可能となり、日本海の監視をどうすべきかなど、日本海の管理につながるアウトプットを出していきたい。

サブテーマ2-2:日本海環境変動予測モデルの構築

(九州大学 広瀬 直毅)

本研究では、日本海は極めて温暖化率が高く、グローバルな変化に対して日本海の応答、生態系の応答はどうなるのかを予測する。
生態系予測モデルでは信頼性が問題であり、この課題ではデータ同化手法により精度をはっきり示し、誤差評価を出し精度保証することで信頼性をあげたいと考えている。精度を保証するために溶存酸素の分布を用いることにした。この結果、栄養塩の分布は良くなったが植物プランクトンについては課題が残っている。デトリタスの沈降速度を早くした結果かなり現実的になった。また、モデルの分解能の実験も行った。
いくつかの実験を行い、グリーン関数を作成しているところで、この作成ができたら即座に核種パラメーターの逆推計ができる。ということが今年後半の予定である。

サブテーマ3:日本海高次生態系モデルの構築

(愛媛大学 郭 新宇)

本研究では、スルメイカの輸送モデル、ズワイガニの輸送モデルを構築することにしており、温暖化の状況の中でこの2つの生物がどう反応するのかを予測するとともに、海洋保護区をどう設置するのかなどを来年度以降進めたい。
能動的に環境変動とMPAの影響を受けるスルメイカの資源量を支配する要素として、ふ化幼生が生まれる場所、ふ化幼生の移動、ふ化幼生の生残過程、ふ化幼生の鉛直運動を、受動的に環境変動とMPAの影響をうけるズワイガニの資源量を支配する要素として、ふ化幼生が生まれる場所と量、ふ化幼生の輸送、ふ化幼生の鉛直運動を検討した。
今後、過去20年間におけるスルメイカの幼生分布の再計算と親魚の役割の確認、ズワイガニのふ化幼生輸送モデルのチューニング、富山湾における流動モデルの完成と解析を行い、最終的には、低次生態系の将来変動に対する高次生態系の応答メカニズム解明、海洋保護区の適正配置を完成する予定である。

テーマ4 沿岸海域の生態系サービスの経済評価・統合沿岸管理モデルの提示

サブテーマ1:生態系サービスの経済評価

(立命館大学 仲上 健一)

生態系サービスについては、供給、調整、文化、基盤、保全というようなサービスの類型化とともに、測定方法もだいぶ整理されてきた。この研究では、生態系サービスを測ると同時に、サスティナビリティー評価を行うことを目的にしている。
三陸、日本海、瀬戸内海について、「きれいで豊かで賑わいのある沿岸海域実現」を目指すために、生態系サービスという視点でそれぞれの価値を測っていくことにしている。26年度は志津川、七尾、日生の各地区でネットアンケートにより愛着度の調査を行った。
この結果を踏まえ、27年度は他のグループと連携したシナリオを提示してアンケートを行い、環境の経済価値を算定するとともに、コスタンザ法による評価を行う予定である。また、里海を軸として環境だけでなく経済発展、災害、文化、管理というような要素を入れて、サスティナビリティー評価の手法を開発するためのモデルの構築を行っている。

サブテーマ2:沿岸海域三段階管理法提案

(近畿大学 日高 健)

文献調査や都道府県アンケート調査を行った結果、里海づくりや沿岸域管理に関わる取り組みが全国で232件あることが分かった。市町村や都道府県や漁協、NPOなどが協議会を作り、利用の調整や環境保全・修復などが行われている。志摩市では英虞湾での先行的な取り組みのネットワーク化、家島・坊勢では漁礁での漁業者・遊漁者による自主的禁漁、日生の海洋牧場、大村湾における長崎県の取り組み、さらには、香川県の「里海づくりビジョン」によるネットワーク化などがある。
これらのことから、都道府県ではトップダウンによるインフラの一元管理、地域では住民と市町村による地域挙げての里海管理、都道府県による支援型アプローチによるアプローチのつながり、都道府県合意による都道府県海域を超えた連携という、階層に応じたマネジメントアプローチによる沿岸域管理の「多段階管理仮説」を提案する。

サブテーマ3:人文科学的考察に基づく市民と沿岸海域を結ぶ物語の発見・構築・継承

(愛知大学 印南 敏秀)

日本人が海の魅力を再認識し里海づくりに協同できるような魅力のある物語を集めて、モデルを提案していきたい。多様な魚食や漁民文化を再編集することが遅れていたことが、海に対する魅力を手放してしまった背景にあると考えている。東瀬戸内海では、大阪の桜鯛、岡山や香川のサワラの贈答文化が衰退している。一方、北陸や東北で最近サワラが大量に獲れだしたが、そこではサワラの食文化がない。東瀬戸内海ではサワラが減少しており贈答食としての継承が難しくなっており、東瀬戸内海のサワラの魚食文化をきちんと調べておくことが魚食文化を継承していくうえで非常に重要と考えている。環境変化と魚食文化の問題をきちんと真剣に考えなければならない時期になった。福井県では観光資源化や文化財化が始まっており、それぞれの地域には指標となる海産資源があるので地域での魚食文化を見通しながら、総合的に日本の魚食文化、漁民文化を考えていかなければならないと思っている。

サブテーマ4:対馬・五島の海洋保護区における漁業活動調整

(九州大学 清野 聡子)

地域の知恵を集めながら半農半漁や小規模漁業の人を中心に協働しながら調査を行っている。海洋保護区の設定については十分な議論が必要で、海洋保護区の管理や持続可能性や利用について何らかの方向性を出したい。このため、海洋物理、気象、社会システムの研究者と学際的に取り組みを始めている。具体的には、関係者で漁場や海岸を見に行く、一緒に調べるなどを行っている。
また、漂流ブイで対馬渦が実際にあることを確認し共有することにより科学者と漁業者が一緒に海の状況を把握するなどでデザインしていこうとしている。五島では、半農半漁の人たちが持続的に生きていくための農地の保全についての調査を行っている。三井楽半島で定置網漁業者と潮の動態を調査するなどを行っている。
知恵を収集し科学的な調査と合わせて島の自然に適応した管理手法を、山から海までの手法としてみていきたい

テーマ5 沿岸海域管理のための統合数値モデル構築

(国際エメックスセンター 柳 哲雄)

テーマ5では、26年度は「大阪湾の透明度とDO」、「播磨灘の栄養塩とノリ養殖」、「広島湾のカキ養殖」、「洞海湾の貧酸素」について、コンサル委託により数値計算モデルの構築を行った。27年度は、瀬戸内海の転送モデルとして大阪湾のイカナゴとカタクチイワシのモデルを作るとともに、志津川湾のカキ養殖モデルの構築を行っている。
 来年度は、志津川湾で統合モデルを作成し見える化を行い実際に漁民に示して、どうすれば志津川湾の管理ができるかを検討する。最終年度には瀬戸内海の全体モデルを作り「1950年ごろの瀬戸内海が今の海とどう違うのか、どこが同じなのか。」などを明らかにし「2050年ごろの瀬戸内海はどうなるのか。」ということを社会・人文科学を踏まえて予測したい。
26年度に実施した、洞海湾の貧酸素消滅機構のモデルの結果ではTN・TPの削減が最も効果があったことが明らかになった。27年度に実施している大阪湾のシラスのモデルでは、まだ暫定ではあるが、転送効率を算定し、漁獲量の分布を再現することができた。来年度は志津川湾で見える化を行い、協議会により志津川湾の将来像について協議を行うことにしている。

2.総合討論(主な意見)

  • 藻場・干潟について、栄養塩収支だけでなく生活する場の評価を丁寧にしていく必応がある。栄養塩管理ができたと思っても藻場干潟を増やすことによってそれが失敗だったということがないようにすべき。
  • これまでいろいろな内湾や沿岸域で研究されてきたが共通のプロトコルのようなものは本当にできるのだろうかというのが感想である。
  • テーマ3では、日本海の管理が強調されているが、どういう当事者を想定し、どういう利害関係の下に何を目指して管理するのかが見えにくい。
  • 日本海は、瀬戸内海や志津川湾とは規模も異なり展開しにくいのではないか。国際的沿岸海域という特徴をどうやって他の地域でツールを結びつけるのかは難しいのではないか。
  • 研究者からは研究内容をどんどん情報発信していけばそれでよいのではないか。それを実際に行政側がどう使うかは行政側が考えることであろう。行政提案、政策提案にこだわることはないと思う。
  • S-13の課題は「持続可能な沿岸域」ということだが、持続可能なという言葉の定義はあるのだろうか。いくつも指標を重ねていくと、本当に今の瀬戸内海は50年前と比べて持続性がないのか、疑問に思う。

参照

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