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環境省環境研究総合推進費S-13 持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発環境省環境研究総合推進費S-13 持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発

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用語集

A

ASC認証

養殖水産物が持続可能で、環境や社会的責任に配慮して生産 されたものであることを認証する制度。

テーマ4報告書3ページ担当:小幡

AMOS16

IBMが販売している共分散構造分析のためのソフトウェア。オブジェクトベースの操作が可能で扱いやすく、多くの使用者がいる。

テーマ4報告書8ページ担当:太田

I

ITQ

個別取引可能漁獲割当

テーマ4報告書16ページ担当:高尾

M

MEY

最大経済的漁獲量。漁業者にとって経済的収益が最大となる漁獲量水準を表す。

テーマ4報告書16ページ担当:高尾

N

N/P 比

水中や生物体内に含まれている窒素(N)とリン(P)量の元素比を表している。一般に、水中の無機栄養塩(NO3-N,NO2-N,NH4-N:無機三態窒素と PO4-P:無機態リン)の濃度比をいう。植物プランクトンの体組成は、この比が16 程度であることから、水中の栄養塩濃度の絶対値だけではなくN/P 比も基礎生産を制御する要因となる。

テーマ2担当:門谷

S

SPSS18

IBMが販売している統計分析のソフトウェア。扱いやすいユーザーインターフェースで多くの利用者がいる。

テーマ4報告書8ページ担当:太田

アリル型

同一の遺伝子座にある相互に区別可能な対立遺伝子の型のこと。マイクロサテライトDNAにおいては、主に反復数の違いに基づくPCR増幅産物の塩基サイズを指標に区別される。

テーマ1報告書担当:西嶋

アラインメント

配列の類似性に基づき塩基配列を並べること。

テーマ4報告書12ページ担当:清野

域学(対馬)

地域に関する学問。地域と学術・研究・教育機関が連携して行う。個別性に着目しつつも、普遍性を見出すアプローチをとる。

テーマ4報告書13ページ担当:清野

栄養段階

ある生物が食物連鎖においてどの段階にあるかを示す指標。例えば、植物プランクトンは1.0、動物プランクトンは2.0、マイワシは2.5、イカナゴは3.0、サワラは4.0である。

総括報告書担当:柳

塩性湿地

海岸にある湿地・沼地であり、海に近いため潮汐の影響により、時間帯により塩水・汽水に冠水するか、または陸地となる地形を指す。干潟全般よりも波浪の影響を受けにくい場所に分布しており、通常、高塩濃度に耐える種子植物(塩生植物)が繁茂し、多くの生物の生息場として生態的に重要な役割を果たしている。

テーマ2担当:小松

栄養カスケード

高次捕食者から、その餌生物、さらにその餌となる植物へと捕食の影響が高次栄養段階から低次栄養段階へと波及することを意味し、これが一本の滝のようであることから、trophic cascade(栄養カスケード、栄養の滝)と呼ばれている。北米西海岸でラッコーウニー海藻ジャイアントケルプの間で、このような状態が見られており、ラッコが減ると、ウニが増えて、海藻ジャイアントケルプが減少し、ジャイアントケルプの藻場が磯やけする。逆に、ラッコが増えるとウニが減少し、ジャイアントケルプの藻場は繁茂する。

テーマ2担当:小松

エコトーン

移行帯または推移帯とも呼ばれ、河岸や湖沼の沿岸等、生物の生息環境が連続的に変化する場所である。

テーマ4報告書5ページ担当:小幡

栄養塩類

植物が有機物にする際に用いる窒素、リンなどの物質。

テーマ4報告書11ページ担当:清野

夏眠

夏季の高水温への対応として、活動を抑制した状態。イカナゴでは夏季に海底砂中で長期間過ごす状態を夏眠と呼ぶ。

テーマ1報告書担当:西嶋

環境容量

過密養殖による生産性の低下や過度な環境影響を避けることが可能な養殖量の上限。生物の個体群動態を考えられる際などに広く取り入れられている一般的な概念である。

テーマ2担当:坂巻

拡張レッドフィールド比

微細藻類の炭素(C)、窒素(N)とリン(P)のモル組成比(106:16:1)を、発見した研究者の名前を冠してレッドフィールド比と呼ぶ。特にNとPの比(N/P比)は、海洋中の栄養塩類において藻類の増殖を制限する栄養塩を判断する目安として用いられる。海洋中で微細藻類の増殖を制限する栄養因子である鉄(Fe)やケイ素(Si)を加えると一般的に N:Si:P:Fe=16:15:1:0.001~0.0001 となることが知られており、これを拡張レッドフィールド比と呼ぶ。

Redfield, A.C., James Johnstone memorial volume, 177-192 (1934)
Martin, j.H. et al., deep-Sea Research 36, 649-680 (1989)

テーマ2担当:吉村

海洋保護区

生物多様性や生態系、生息環境を保護する海域の一定の空間。生物や環境のモニタリングを行いながら、主に人間活動を管理して行う。保護は、立入禁止から持続可能な利用までと幅広く、自然公園、天然記念物、水産資源保護区などがある。

テーマ4パンフ担当:清野

観天望気

空の雲などを観て天気を予想する。地域の自然に即した伝統的知識。

テーマ4パンフ担当:清野

環境DNA

生物から排出され、環境中に漂うDNA。粘膜や排泄物等に由来する。

テーマ4報告書4ページ担当:清野

環境科学的手法

環境分野に用いられる科学全体のこと。特に、環境に関する多様で変動する要素を考慮する。

テーマ4報告書7ページ担当:清野

管理の輪

管理の仕組みを循環させるためのPDCAサイクルを指し、沿岸域の状態を表す指標をもとに管理の内容を変えるというもの。

テーマ4報告書担当:日高

ガバナンス

統治の権限や意思決定にかかる様式

テーマ4報告書担当:日高

ガバナンスの階層構造

統治の権限が意思決定のレベルによって、上位(制度的枠組み)、中位(一般的なルール)、下位(現場のルール)と階層的に分かれること。

テーマ4報告書担当:日高

協議会

各沿岸域の管理案を提案し、その進行具合をチェックし、代替案を提案するための利害関係者の集まり。

総括報告書担当:柳

共同漁業権

共同漁業(一定の水面を共同に利用して営む漁業)を営む権利で、第1~5種に分かれ、10年ごとに更新される。
第1種:藻類、貝類又は農林水産大臣の指定する定着性水産動物(いせえび、うに等)を目的とする漁業。
第2種:網漁具を移動しないように敷設して営む漁業(小型定置、固定式刺網漁業、敷網等)。
第3種:地びき網漁業、地こぎ網漁業、船びき網漁業(動力漁船を使用するものを除く)、飼付漁業、つきいそ漁業等。
第4種:寄魚漁業又は鳥付こぎ釣漁業であって第5種以外のも。
第5種:内水面又は大臣が指定する湖沼に準ずる海面において営む漁業であって第1種以外のもの(増殖が義務づけられている)。

テーマ2担当:小松

基礎生産

光合成による有機物生産を指す。一般に水域では、植物プランクトンや海底に生息する単細胞微細藻類、大型藻類やアマモなどの海草類が主要な担い手である。水域では、基礎生産量を面積1m2当りの水柱全体を積算した数値として表すことが多い。このことにより、あらゆる生態系で得られている基礎生産量との比較が可能になる。

テーマ2担当:門谷

協働海洋学

海に関する多様な立場の人たちが協働して行う海洋学。漁業者、研究者、市民、行政などによる共同調査など。

テーマ4パンフ担当:清野

凝集沈降

水中の溶存成分が多価陽イオンによって電荷中和される、もしくは有機物の作用によって粒子同士が結合する等の反応で不溶化し、重力の作用によって不溶化鉄が沈降する現象。鉄の場合、河川から汽水域に到達すると塩濃度の上昇に伴い、河川水中の溶存鉄の40~96%が凝集沈降することが報告されている。

Boyle, E.A. et al., Geochimica et cosmochimica acta 41, 1313-1324 (1978)

テーマ2担当:吉村

魚類相

ある水域に生息する魚類の全種類。

テーマ4報告書11ページ担当:清野

区画漁業権

区画漁業権は、養殖業者等の申請に基づき、都道府県知事が漁業法の規定に従って免許する漁業権であり、養殖の方法に応じて第1種から第3種までの3種類がある。第1種には、一定区域内において石、瓦、竹、木等を敷設して営む養殖業であり、真珠養殖、カキ垂下式養殖、ノリひび養殖、ワカメ養殖、ホタテ養殖、小割り生簀養殖が含まれる。第2種には、土、石、竹、木等によって囲まれた一定の区域内において営む養殖業であり、クルマエビ築堤式養殖、魚類網仕切式養殖などがある。第3種は、第1種と第2種以外の養殖漁業であり、地まき式養殖等がある。 ひび建養殖業、藻類養殖業、真珠養殖業以外の垂下式養殖業、小割り式養殖業及び第3種区画漁業のうち貝類養殖業は特定区画漁業権と称されており、その漁場が属する地元地区の養殖業者の大部分が当該地元地区の漁業協同組合員であるときは当該組合に優先的に免許を与えて、当該組合に地元養殖業者の漁業調整をする自治組織として漁業権を管理させることとしている。

テーマ2担当:小松

Chla(クロロフィル a)

光合成を行う生物が持つ光合成色素の主成分である。植物プランクトンなどの単細胞微細藻類は相対的に多量のクロロフィル a を含んでおり、藻体乾重量の 1%前後を占めている。一般に水域のクロロフィル a 濃度は、1~10 μg/L 程度のことが多く、 20 μg/Lを超えると、水が着色して見えることから赤潮と呼ばれる。

テーマ2担当:門谷

原単位

単位面積、単位時間当たりに各土地被覆形態もしくは点源(ポイントソース)から河川へと流入する物質の負荷量。

テーマ2担当:吉村

コスタンザ法

Robert Costanza博士を中心とした研究グループが1997年に発表した論文“The value of the world’s ecosystem services and natural capital”. Nature 387で用いた生態系サービスの経済評価手法であり、17種類の生態系サービスの価値は、全世界で毎年、30兆ドルという試算結果を出した。

テーマ4パンフ担当:仲上

個別取引可能漁獲割当制度

個別取引が可能な範囲における漁獲割当制度

テーマ4報告書7ページ担当:高尾

コンティジェンシー理論

経営管理理論の一つで、環境に応じてそれに適した経営組織の形が変わるため、常に状況に応じて変化させないといけないというというもの。

テーマ4報告書26ページ担当:日高

ゴードンモデル

H. S. ゴードンによる漁業経済学モデルで、過大な漁業活動による資源の枯渇メカニズムを表している。

テーマ4報告書16ページ担当:高尾

合成変数

複数の変数を合成して作られる変数。例えば、心理尺度として、ある心理学的概念を下位の構成要素に分解するなどする際に、対象となる心理学的概念は、複数の下位尺度の合成変数となる。

テーマ4報告書17ページ担当:太田

里海

適切な人手を加えることで生産性と生物多様性が高くなった沿岸海域。きれいで、豊かで、賑わいのある沿岸海域。

総括報告書担当:柳

三階層管理

日本海沿岸域の環境は遠く東シナ海からの影響も強く受けており、従来の陸-沿岸域の考え方だけでは、管理を行えないため、広域(東シナ海・日本海)、中規模(日本海対馬暖流内側域)、局所(個別湾)の3つの異なるスケールを組み合わせた管理が必要としたもの。

テーマ3担当:吉田

サステイナビリティ

ブルントラント委員会は「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たすこと」を持続可能な開発の条件とした。持続可能性の要素として、環境・社会・経済がある。持続可能性は従来、水産資源を如何に減らさずに最大の漁獲量を維持できるかという水産資源における資源評価という分野の専門用語として用いられた。

テーマ4パンフ担当:仲上

里海物語

里海と人々の生活・歴史・文化を記録し、里海づくりに対する漁民、沿岸域住民の営為を広く社会に知ってもらうための物語。

テーマ4報告書6ページ担当:印南

里海ネットワーク

最も基本的な里海は地先や小湾レベルで、その地域の状況に応じて形成され、それらがいくつか連携することによってより広い範囲の沿岸域が管理されるというもの。

テーマ4担当:日高

脂肪酸

脂質の構成成分。炭素数や二重結合数などの異なるものが多種存在する。一部の脂肪酸は、環境では、特定の生物分類群(例えば、細菌、藻類、高等植物など)によってのみ生産されていると考えられることから、粒状有機物の生産者起源を推定するマーカーとして使用されている。さらに、一部は、食物連鎖内における餌源の特定にも用いられている。

テーマ2担当:坂巻

シーケンス

DNAの塩基配列を決定すること。

テーマ4報告書12ページ担当:清野

シャドウプライス

追加的な財やサービスの個人の厚生への寄与度を金銭的価値で評価する経済理論上の真の価格。

テーマ4報告書23ページ担当:上原

支援型アプローチ

専門分野、地域などによって細分化される沿岸域管理の個別取組みを支援するとともに、関係する個別の取組みをつなげること。

テーマ4報告書担当:日高

持続可能性統合指標

ある沿岸海域のきれいさ・豊かさ・賑わいを、それぞれの指標で表し、さらに人口動態・産業連関度・観光客数などの指標も取り込んで、その地の持続可能性を判断するための統合指標。

総括報告書担当:柳

順応的管理

沿岸域の生態系管理において、自然の長期的持続可能性を最優先し、生態系のひろがりとつながりを重視し、多様な主体の参加のもと、自然の不確実性を踏まえた順応的な方法で管理する方法。管理手法では、現状把握から目標設定、計画・設計、施工、 管理までを包括的に議論するための計画技法である。

テーマ4報告書21ページ担当:仲上

ステリベクス-HVフィルター

滅菌濾過をするためのフィルター。メルクミリポア社が製造する商品。

テーマ4報告書12ページ担当:清野

生態系サービス

生態系サービスとは生物多様性を基盤である生態系から得られる恵みである。TEEBでは生態系サービスミレニアム生態系評価(MA)の分類を基本として、「供給サービス」、「調整サービス」、「文化的サービス」、「生息・生育地サービス」に類型。

テーマ4パンフ担当:仲上

生物生産性

ある生態系における一定期間の生物生産の量

テーマ4報告書9ページ担当:桜井

生物多様性

生態系における生物の間や生態学的複合体の間の変異性をさし、種、生態系(生物群集を含む)、遺伝子の多様性を含む。

テーマ4報告書9ページ担当:桜井

脆弱性

植物プランクトンの増殖に影響を及ぼすその海域固有の環境特性

テーマ1報告書担当:西嶋

脆弱性指数

脆弱性を数値化した総合指標

テーマ1報告書担当:西嶋

全政府あげてのアプローチ

行政の部門による縦割りを排して、沿岸域の関連部署が横断的に政策・施策に取り組むこと。

テーマ4報告書担当:日高

炭素安定同位体比

質量の異なる12Cと13Cが存在し、その比を意味する。基礎生産の過程では、代謝経路や取り込まれる無機炭素の同位体比などに依存して、生産される有機物の炭素安定同位体比が決まる。そのため、 陸上高等植物や、沖合いの植物プランクトン、内湾の底生藻類など、生産者の種類や場所の違いによって有機物は異なる炭素安定同位体比を持っている。その様な性質を利用し、環境中における異なる起源の有機物の混合状態や消費者の餌源起源の推定などに用いられている。

テーマ2担当:坂巻

ダイナミックMPA(動的海洋保護区)

従来の海洋保護区は、ある定められた領域(日本の場合は国立公園・国定公園の海域や漁業権区域など)を指定していたが、海洋生物の保全を行うためには、生活史による生息海域の変化や、その年々の環境に合わせた海域を保全していくことが必要であり、生活史や環境に合わせて保全する海域を変化させる考え方。

環境庁自然保護局 (1992) 第4回自然環境保全基礎調査海域生物環境調査報告書 (干潟、藻場、サンゴ礁調査)第2巻 藻場、財団法人海中公園センター

テーマ3担当:吉田

多段階(三段階)管理仮説

沿岸域管理の枠組みを示す仮説で、沿岸域の利用や管理制度は海岸線に近い浅場と沖合の海域では大きく異なっているため、沿岸域を地先と沖合(都道府県の管理海域)、さらに広域(都道府県の管轄を超えた海域)に分け、入れ子式に全体を管理しようというもの。

テーマ4パンフ担当:日高

多穫性魚類

マイワシなど一度に大量に獲れる魚類。

テーマ4報告書担当:清野

ダイナミクス

沿岸域管理の仕組みが、対象となる海域の範囲によって異なり、さらに時代とともに変化することから、その変化を動態的に捉えようというもの。

テーマ4報告書28ページ担当:日高

地域固有透明度

その海域において植物プランクトンが存在しないと仮定した場合の透明度。
(植物プランクトンの減少によって到達し得る最大透明度)

テーマ1報告書担当:西嶋

地域あげてのアプローチ

地域で沿岸域に関わる様々な組織、業界、分野の人たちがこぞって沿岸域管理に参加すること。

テーマ4報告書担当:日高

対馬暖流

黒潮の分流で東シナ海から対馬海峡をとおり日本海を北上する暖流。

テーマ4パンフ担当:清野

ツールボックス

道具箱。ここでは、調査研究、政策などの方法論を揃えて、現場適用できるように用意しておくことを示す。

テーマ4パンフ担当:清野

低次生態系

海洋生態系において、主に生産者(栄養段階1)および一次消費者(二次生産者:栄養段階2)を担う植物・動物プランクトンなど微小な生物で構成される生態系要素。

テーマ1パンフ担当:西嶋

転送効率

ある栄養段階の同化エネルギーとそのすぐ下位の栄養段階の同化エネルギーの比。例えば、1次→2次の転送効率は2次生産量/1次生産量で与えられる。

総括パンフ担当:柳

転送効率

一次生産量に対する二次生産量の割合(%)
※EcopathにおけるTrassfer efficiencyとは異なる。

テーマ1パンフ担当:西嶋

転送効率

食物連鎖系において、被食者(餌生物)から摂食者(植食動物)、さらに捕食者(肉食動物)へのエネルギー移動の効率を指す。一般には、食べた餌量の 10% 程度が転送されることが知られている。策餌にエネルギーを使わなくてもよい生物(餌の接近を待つ二枚貝など)は高い転送効率を示すことが多い。

テーマ2担当:門谷

鉄仮説

南極海などの周囲に陸地が少ない外洋において、窒素やリンなどの栄養塩類が豊富に存在するにも関わらず、微細藻類の現存量が著しく少ない(High nutrient low chloropyll, [HNLC])海域が知られていた。1989年にJohn Martin博士によって、このようなHNLC海域では水中の溶存鉄の不足によって微細藻類の現存量が少ないことが報告された。HNLC海域のように鉄の不足によって微細藻類の増殖が制限されることを(Martinの)鉄仮説と呼ぶ。

Martin, J.H. & Fitzwater, S.E., Nature 331, 341-343 (1988)
Martin, J.H., Paleoceanography 5, 1-13 (1990).
Martin, J.H. et al., Nature 371, 123-129 (1994).

テーマ2担当:吉村

同化指数

光合成過程において、有機物として植物体内に固定された炭素量をクロロフィル a 量で除したもので、一般には一定量のクロロフィル a、一定時間当たりの炭素固定量として表現される(例えば mgC/mg Chl.a/h)。この同化指数は、異なる時空間で別々に測定された光合成活性を比較するための指数として用いられている。

テーマ2担当:門谷

統合的沿岸海域管理

Integrated coastal zone management(ICZM)の訳語であり、1993年の世界沿岸域会議は声明でICZMについて、沿岸域管理の様々な問題を扱うのに最も適した、持続的発展を達成するため重要なツールであると述べている。統合的沿岸海域管理の枠組みでは、包括的なアセスメント・目的設定・計画・管理を文化等にも配慮しながら、異なる価値観や利用形態を考慮した総合的な管理法である。

テーマ4報告書6ページ担当:仲上

統合モデル

陸域・沿岸海域・外洋域・大気・底質を統合し、さらに、自然科学・社会科学情報を含む数値モデル。

テーマ5パンフ担当:柳

ドレッジ

袋網を付けた橇上の器具を海底に降し船で曳くことで、水平的に海底表層の底生生物および海底底質を採取する器具。

テーマ1報告書担当:西嶋

ネットワークガバナンス

統治理論の一つで、階層構造を前提とした垂直的に一元的な統治様式に対して、様々な主体が水平的にネットワークによって連結する統治様式をさす。

テーマ4パンフ担当:日高

ハビタットマッピング

現場でのデータ取得から作図までの一連の作業により生息場の分布を地図上に示すこと。衛星画像解析などにより生態系のハビタットを分類し、地理情報システム(GIS)を用いて生息場の管理に用いられる。また、生物の分布などと重ね合わせて生息場と生物個体、環境要素などとの関係などについてもGISを用いて検討することができる。

テーマ2担当:小松

半飽和定数

酵素反応速度(v)の一般的な動力学的式であるミカエリス・メンテン(Michaelis-Menten)式v=(Vmax×[S])/(Km+[S])において、反応速度の理論的な最大値(Vmax)に対してv=Vmax/2となる基質濃度Kmを半飽和定数と呼ぶ。このミカエリス・メンテン式は、微細藻類の増殖速度(μ)と栄養塩濃度との関係についても適用できることが知られており、最大増殖速度(μmax)に対してμ=μmax/2となる栄養塩濃度が半飽和定数となる。栄養塩濃度がこの半飽和定数を下回る場合、この栄養塩が微細藻類の増殖を制限し得るという指標に用いられることがある。

テーマ2担当:吉村

半人工的自然

自然生態系に人間活動が混在して出来上がる特有の自然のかたち。里山、里海はその典型。

テーマ4報告書3ページ担当:高尾

半人工生態系

自然公園や保護区などの自然生態系と、農地や繁殖用の池などの人工生態系が混在している状態。

テーマ4報告書7ページ担当:高尾

ヒステリシス

履歴効果。1例として富栄養化の過程と貧栄養化の過程で栄養塩負荷量と栄養塩濃度の関係が異なること。

総括報告書担当:柳

貧酸素化

内湾域などにおいて、水塊中で生産された植物プランクトン等が枯死・沈降し細菌等がそれらを分解する過程で、呼吸により酸素が消費される。富栄養化・有機汚濁が進んだ水域では、そのような酸素消費が過度なものとなり、移流や拡散による酸素供給が追いつかなくなることで、底層の溶存酸素が枯渇する。そのような場では水生生物が生存できず、無生物となることがある。

テーマ2担当:坂巻

不溶化鉄

水中に存在する鉄の中で、0.2~0.45μmのフィルターを通過しない懸濁粒子状の鉄。不溶化鉄とも呼ぶ。

テーマ2担当:吉村

フラックス

単位時間あたりの物質の移動量(例:kg/day)。本研究では、河川から海洋へと流入する。水中から微細藻類へと取り込まれる等の2つ異なる場(もしくは状態)の境界における単位時間あたりの物質移動量を、特定の方向を正として示す。

テーマ2担当:吉村

腐植土

土壌微生物によって動植物遺体が分解・変質されて生成される有機物を腐植と言い、この腐植を一定割合以上有する土壌を腐植土と呼ぶ。土壌中や自然水中に存在する分解・変性が進んだ高分子有機物群を総称して腐植物質と呼ぶ。腐植物質はその化学的特性から大きく3種類に分けられ、非水溶性画分をヒューミン、pH2以下の酸に可溶の成分をフミン酸、酸にもアルカリにも可溶の成分をフルボ酸と呼ぶ。フミン酸やフルボ酸はフェノール基やカルボキシル基等の官能基を有し、金属と錯体形成能を持つなど、土壌・自然水中で多様な化学反応に関与していると考えられている。

テーマ2担当:吉村

プライマー

DNA複製に必要な不可欠な短い塩基配列。一方のDNA鎖とペアになるよう設計される。

テーマ4報告書11ページ担当:清野

ベーンせん断強度

ベーンせん断試験機という機器で測定される、底質の物理抵抗を示す指標の一つ。

テーマ1報告書担当:西嶋

包括的富指標

国連大学地球環境変化の人間・社会的側面に関する国際研究計画(UNU-IHDP)は、Inclusive Wealth Report 2012(IWR: 包括的豊かさに関する報告書)」を発表。本報告書では、Inclusive Wealth Index(IWI: 包括的富指標)が採用され、この指標は、従来の国民総生産(GDP)や人間開発指数(HDI)などのように短期的な経済発展を基準とせず、持続可能性に焦点を当て、長期的な人工資本(機械、インフラ等)、人的資本(教育やスキル)、自然資本(土地、森、石油、鉱物等)を含めた、国の資産全体を評価し、数値化した。

テーマ4報告書9ページ担当:仲上

マイクロサテライトDNA

DNA上で数塩基単位の配列が反復している領域。突然変異率が高いなどの事から、集団や近縁種間の進化的関係を調べるための遺伝的マーカーとして用いられる。

テーマ1報告書担当:西嶋

メタ回帰分析

オリジナルのデータではなく、複数の既存研究で収集されたデータや分析結果を統合して推計用データとして用いる回帰分析。

テーマ4報告書20ページ担当:仲上(上原)

藻場

海藻類、もしくは、種子植物である海草の生えている場所を言う。環境庁自然保護局(1992)は、日本の藻場を、海藻藻場は、卓越している海藻の分類群によりガラモ場(ホンダワラ類が卓越)、コンブ場(コンブ類が卓越)、アラメ場(クロメ、カジメ、アラメ類が卓越)、ワカメ場、アオサ場、テングサ場に、海草藻場は、アマモ場に分類している。このアマモ場には、温帯域では、アマモ以外に、タチアマモ、コアマモ、スゲアマモ、スガモなど、熱帯域では、ウミショウブなどが含まれている。

環境庁自然保護局 (1992) 第4回自然環境保全基礎調査海域生物環境調査報告書 (干潟、藻場、サンゴ礁調査)第2巻 藻場、財団法人海中公園センター

テーマ2担当:小松

「森は海の恋人」運動

川が運ぶ森の栄養分が、牡蠣の餌となる植物プランクトンを育むという考えのもと、気仙沼市の畠山重篤氏(京大フィールド研社会連携教授)を中心とする牡蠣養殖業者が気仙沼湾に流入する河川の流域の山地で植樹運動を開始した。その標題が「森は海の恋人」であり、この植樹活動は「森は海の恋人」運動として全国に拡がっている。川が運ぶ森の栄養分として腐植土に豊富に含まれるフルボ酸と結合した有機鉄が、海の植物プランクトンの増殖や海藻類の成長に必要であるという考えが植樹活動の重要な論拠となっている。

畠山重篤,漁師さんの森づくり-森は海の恋人-,講談社(2000)
松永勝彦,森が消えれば海も死ぬ 陸と海を結ぶ生態学,講談社(1993)

テーマ2担当:吉村

山たて

山や岬などを海から望み、洋上で定位する。沿岸での航海や漁業に不可欠な技。

テーマ4パンフ担当:清野

有機鉄

水中に存在する鉄イオンと腐植物質等の有機物の配位子が結合した錯体を指す。一般に酸化的な海水中の鉄イオンの溶解度は極めて低く、海洋中の溶存鉄の99%以上は、有機鉄の状態で存在している。

テーマ2担当:吉村

溶存鉄

水中に存在する鉄の中で、0.2~0.45μmのフィルターを通過する成分。一般に大部分の海産微細藻類は溶存鉄の中の無機化した鉄しか利用できないと考えられており、その濃度は溶存鉄濃度よりも数桁低くなる。

テーマ2担当:吉村

卵数法

定量的に採集された卵の分布・存在量から、親魚の量を推定する手法。

テーマ1報告書担当:西嶋

リアス式湾

もともと海岸線に対して垂直方向に伸び、河川により浸食された谷が沈降してできた湾のことで、スペイン北西部のガリシア地方で多く見られる入り江riaがもとになっている。このタイプの湾が連続して、のこぎり歯状に分布する海岸をリアス式海岸(ria coast)という。湾の幅が狭く、湾の岸沖方向の軸に岸から垂直に向かって急に深くなり、かつ、湾口部が最も深くなり、海水交換も悪くない。

テーマ2担当:小松

粒状有機物

細菌や藻類などの微生物体、動植物の遺骸などからなる粒子状の有機物。水域における有機物動態の研究においては、細粒なものだけではなく、落葉のようなものが粗粒の粒状有機物として考慮されることもある。

テーマ2担当:坂巻

レント

一般に、土地などを利用することで得られる利益から、それに関わる費用を控除した超過的利益。

テーマ4報告書7ページ担当:高尾

レッドフィールド比

植物プランクトン細胞を形成する炭素・窒素・リンのモル比(106:16:1)。これにケイ素、鉄も加えて表すこともある。

テーマ5報告書担当:柳・多田

湾灘管理

湾・灘単位での水質管理

テーマ1報告書担当:西嶋