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環境省環境研究総合推進費S-13 持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発環境省環境研究総合推進費S-13 持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発

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テーマ1(課題番号S-13-1)閉鎖性海域・瀬戸内海における栄養塩濃度管理法の開発

概要

瀬戸内海の水質管理を現在の一律管理から地政学的・社会的な特性および季節的な変動を考慮した湾灘管理に発展させるとともに、栄養塩管理と生物生息環境の保全・再生を通じて赤潮等の障害を起こさない健全な物質循環と高い生物生産性の実現を目標とした持続性の高い沿岸管理手法を開発する。

リ-ダー 西嶋 渉(広島大学環境安全センター教授)

サブテーマ1 栄養塩濃度管理法開発

平成26~28年度実績

研究対象海域を絞り、調査地点・手法・項目等の問題点の抽出、改善などの検証を行いながら、栄養塩および植物・動物プランクトンやイカナゴ・カタクチイワシ等プランクトン食魚などの生物調査を行い、水質と生物の実態把握を行った。広島湾および大阪湾における基礎的な水質項目および一次・二次生産量の測定を終了し、転送効率を算出することができた。干潟においては、水産有用種であるアサリの主な餌資源(底生微細藻類)および一次・二次生産量を把握し、転送効率を算出することができた。また、透明度の特性に関しては、湾灘における水中の各光減衰因子の寄与率の算出に成功し、植物プランクトンを含まない粒子による光減衰である地域固有透明度、および水質特性により瀬戸内海における赤潮が潜在的に発生しやすい水域を特定する手法を開発した。イカナゴの個体群動態や遺伝子流動の推定を可能とする新規DNAマーカーを開発することができ、瀬戸内海に生息するイカナゴが単一の遺伝的集団で形成されていることを初めて科学的に立証した。粒子追跡モデルを使用した解析では、イカナゴの産卵場を推定できる可能性が示され、調査および飼育実験を通して産卵場所の環境特性を明らかにし、瀬戸内海の生態系全体にとって重要な位置を占める魚種の資源量および再生産の現状を明らかにした。

平成29年度計画

これまで瀬戸内海中西部海域で実施した調査結果と本年度調査に基づく知見、過去の知見が豊富な大阪湾の生態系構造解析、植物プランクトン増殖に対する脆弱性や地域固有透明度などの海域固有の特性を整理し、海域による生態系構造の違いとその要因を見出し、沿岸管理のための類型化を進める。さらにテーマ5で開発する瀬戸内海の統合モデルを活用して上記類型化の精緻化を図る。また、プランクトン食魚の動態、減少要因について理解するため、その生態の解明を進めると同時に、プランクトン食魚からさらに高次生態系への連鎖について、魚食魚の食性を調査する。

実施機関 国立大学法人広島大学
リ-ダー 西嶋 渉(広島大学環境安全センター教授)  

サブテーマ2 干潟・藻場の栄養物質循環・生物再生産に果たす機能の解明

平成26~28年度実績

備讃瀬戸海域のアマモ場における栄養塩収支を把握することで、アマモの窒素利用過程について明らかにすることができ、降雨時の間欠的な栄養塩供給がアマモの生育にとって重要であることが定量的に示された。また、サイドスキャンソナーおよび水中カメラによる観測により、藻場内のアマモ分布についてアマモの繁茂域と非繁茂域を区別することに成功した。

平成29年度計画

脆弱性が高い海域で期待される干潟・藻場の栄養塩循環・生物再生産に果たす機能を解明するため、本年度は前浜干潟について調査し、河口干潟との比較の中で干潟の機能を評価する。

実施機関 国立大学法人香川大学
リ-ダー 多田 邦尚(香川大学農学部教授)