閉鎖性海域の環境の保全と適正な利用をめざして 公益財団法人 国際エメックスセンター

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若手研究者活動支援制度

目的

公益財団法人国際エメックスセンターは調査・研究体制の強化を図るため、様々な取り組みをしています。その一環として、令和2年度より若手研究者活動支援制度を設置し、閉鎖性海域の環境保全に資する研究に取り組む優れた若手研究者を育成支援することとしました。 この制度を通じて、優秀な若手研究者を発掘して若手研究者間及びエメックスセンター研究員会議等とのネットワークを構築し、閉鎖性海域に関係する研究者の国際的な研究の発展をめざします。

若手研究者活動支援について

令和6年度若手研究者活動支援制度 助成対象者7名決定!

この制度を始めて今年で5年目になりました。
おかげさまで10件の申請があり、6月20日(木)EMECS研究員会議において厳正な選考が行われ、助成対象研究者として、昨年からの継続5名を含む7名が決定しました。

助成対象者情報

氏名 研究課題名 所属
岡村 知海 餌料環境の変化が二枚貝浮遊幼生に及ぼす影響の解明と浮遊幼生の着底評価指標の開発詳しくはこちら 水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 沿岸生態システム部 漁場生産力グループ
板倉 光 有明海における遡河回遊魚エツの産卵・回遊生態の解明と保全に関する総合的研究(その3)詳しくはこちら 東京大学 大気海洋研究所
伊佐田 智規 アマモ場におけるブルーカーボン貯留経路としての透明細胞外重合物質粒子および粒状有機炭素の変動要因の解明詳しくはこちら 北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 厚岸臨海実験所
中村 隆志 陸域―海域―生態系統合モデルを用いた宮城県志津川湾デジタルツインの開発(その2)詳しくはこちら 東京工業大学 環境・社会理工学院
小林 英貴 炭素収支の解明を主とした沿岸域の炭素・栄養塩の動態把握
:富山湾をモデルケースとして(その2)詳しくはこちら
富山大学 学術研究部 理学系
中國 正寿 タイ湾奥部におけるミドリヤコウチュウの生態と赤潮発生に伴う環境変化の解明詳しくはこちら 香川大学 瀬戸内圏研究センター
尾崎 竜也 潮汐と海底湧水を反映した干潟の基礎生産過程
:機械学習と連続観測によるアプローチ詳しくはこちら
熊本県立大学大学院 環境共生学研究科環境共生学専攻

餌料環境の変化が二枚貝浮遊幼生に及ぼす
影響の解明と浮遊幼生の着底評価指標の開発

水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門
沿岸生態システム部 漁場生産力グループ

研究員岡村 知海

昨年度に引き続き、「令和6年度若手研究者活動支援制度助成金」に採択いただき、感謝申し上げます。
瀬戸内海ではアサリをはじめとする二枚貝類の生産量が減少しています。その要因として様々な因子が考えられていますが、餌料環境の変化がその一つとして指摘されています。
これまでの当所の研究で、10μm以下の珪藻類 (微小珪藻類) がマガキ浮遊幼生の餌として重要であり、その発生量が着底の成否を左右し、資源量に影響を与えることが考えられました。そこで昨年度、「浮遊幼生期の餌料環境の変化は浮遊幼生の生理活性や着底の成否に影響を与える」という仮説の検証のため、現場観測を行いました。その結果、これまでの研究から餌として好適と考えられる微小珪藻類のCyclotella sp.A および Skeletonema menzeliiが優占する期間に発生し、主にこれらを摂餌したと推察されるマガキ幼生の生理活性や着底が良好になる傾向が確認されました。一方、餌として不適と考えられる微小珪藻類のChaetoceros tenuissimusが優占する期間に発生した幼生の生理活性や着底は不良になる傾向が見られました。このように、仮説を支持する結果は得られましたが、現場観測結果の解析のみでは海域の水温や塩分の変動が幼生に与える影響を除外できず、各種微小珪藻類が二枚貝浮遊幼生に与える影響を純粋に評価することができませんでした。そこで本研究では、水温と塩分を統一した飼育条件下において、上記3種の微小珪藻類をそれぞれマガキ浮遊幼生に給餌し、餌の違いが浮遊幼生の生理活性、成長および生残に与える影響を室内試験で調べます。また、昨年度の現場観測で、生理活性の高いマガキ浮遊幼生は着底成功率が高い傾向が確認されました。このことから、発生する二枚貝浮遊幼生の生理活性を調べることで、その海域が二枚貝生産に好適か評価できる可能性が考えられました。 そこで本年度も、マガキ浮遊幼生の生理活性と着底の成否に関するデータを蓄積し、二枚貝浮遊幼生の生理活性が海域評価指標として有効であるか検証します。
本研究の成果は、二枚貝資源を持続的に利用するための環境条件の提示や海域評価手法の開発に繋がるものであり、二枚貝資源を持続的に利用できる健全な沿岸環境の維持に貢献できると考えています。

有明海における遡河回遊魚エツの産卵・回遊生態の解明と
保全に関する総合的研究(その3)

東京大学 大気海洋研究所

助教板倉 光

若手研究者活動支援制度助成金に採択していただきありがとうございます。今年で三年目になります。私は、2014年に東京大学で博士号を取得後、神戸大学と米国メリーランド大学での勤務を経て、2021年12月より東京大学大気海洋研究所に所属しております。私の研究テーマは「環境変動に対する水産資源の応答機構の理解」で、特に魚類の多様な回遊型や生活史特性が環境変動下においてどのように個体群維持に寄与するのかに興味を持って日々の研究を進めています。これまで、ウナギ属魚類やストライプドバスといった海と川を行き来する通し回遊魚を対象とし、耳石分析やバイオテレメトリーを使って、分布・回遊・成長に与える気候変動や環境改変の影響を調べてきました。
本研究課題では、川で産まれ海で成長する遡河回遊魚エツの産卵・回遊生態の理解を通して、閉鎖性海域の環境や本種資源の保全に貢献するための調査を進めます。閉鎖性海域である内湾–河口域生態系は高い生物生産・生物多様性を誇る重要な水域です。特に、汽水域に形成される高濁度域は、多くの水圏生物の生育場として不可欠な水域となっています。カタクチイワシ科エツ属魚類は、高濁度域に強く依存し、海と川間を回遊するため、高濁度域の健全性や川と閉鎖性海域間の接続性を示す良い指標種になり得ると考えています。エツ属魚類は熱帯域を中心に中国からインドに至るアジアに広く分布しますが、日本では有明海とその流入河川のみに生息します。彼らは大陸沿岸性依存種と呼ばれ、これは大陸と日本が陸続きであった時代に、現在の有明海と中国黄河が東シナ海で河口を共有していましたが、大陸と分断された後にも大陸と似た特殊な環境とその環境に特化した種が有明海にのみ残ったと考えられています。そのため、有明海をモデルにエツの生息環境の特性を理解することは、大陸の閉鎖性海域の保全にも役立つ情報が得られると考えています。日本では、エツは初夏に産卵のために川を遡上します。エツは限られた場所と時期にしか見られないことから「幻の魚」とされ、夏の風物詩として珍重されていますが、その漁獲量は長期的に減少傾向にあります。このような状況にもかかわらず、エツの生態情報は国内外を問わず不足しているのが現状です。そこで私は、有明海をモデルとし、耳石や環境DNA分析を用いて、エツの産卵河川、仔稚魚期の成育場ならびに回遊パターン、成長に伴う海での空間分布と生息環境、産卵河川間の接続性の程度を推定し、エツが指標する環境特性を生活史に沿って明らかにしていきます。将来的には、有明海産エツの資源動態機構の理解を通して、このシンボリックな魚の生態情報を指標としたアジアの閉鎖性水域の保全や適切な資源管理の実現に貢献していきたいと考えています 

アマモ場におけるブルーカーボン貯留経路としての
透明細胞外重合物質粒子および粒状有機炭素の変動要因の解明

北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター
厚岸臨海実験所

准教授伊佐田 智規

この度は、EMECS令和6年度若手研究者活動支援制度助成金に採択いただき有難うございます。私は、北海道東部にある厚岸湖・厚岸湾の植物プランクトンやアマモを対象に、沿岸域の炭素循環過程を明らかにする研究を行なっています。近年、沿岸浅海域におけるアマモやコンブといった海草・海藻藻場の光合成により吸収・貯蔵される炭素「ブルーカーボン」は、気候変動を緩和する機能として注目されています。日本は海岸線が世界第6位の長さを誇り、世界的にも主要なブルーカーボン貯蔵国である可能性が高いと考えられています。
本研究では、透明細胞外重合物質粒子(TEPs)と呼ばれるネバネバ物質に注目しています。0.4μm以上の酸性の粘性多糖類で、水中に漂う粒状有機物を凝集させる接着剤として機能します。マリンスノーの様な大型の凝集体を形成する場合もあり、海の中に炭素を閉じこめる重要な役割を果たすと考えられています。
TEPsの起源は生物が細胞外へ排出した溶存有機炭素(DOC)であると言われ、外洋域では植物プランクトンを始めとして多く知見が蓄積されてきました。一方で、アマモ場での有機炭素の主要な埋没・貯蔵過程は、アマモの地下茎や葉などの海底への堆積と考えられているため、TEP動態研究は極めて少ない状況です。アマモ場でもTEPの前駆体であるDOCが多く生成されることが知られているため、TEPも多く生成されると考えられます。1年目の調査結果からは、厚岸湖・厚岸湾のアマモ場におけるTEP濃度は夏季に最も高くなることがわかりました。夏場の高いTEP濃度は、アマモの成長と葉上に生息する付着珪藻類によるTEP生成の寄与が大きいと言うこともわかってきました。2年目では、袋がけ実験を行いアマモからDOCやTEPの生成が認められました。3年目では、さらに沈降過程について調査していきます。TEPsによる有機炭素の貯蔵経路が存在するのかを調査し、アマモ場の炭素循環過程の正確な理解を通して、ブルーカーボン生態系の保全へ貢献することを目指します。

陸域―海域―生態系統合モデルを用いた
宮城県志津川湾デジタルツインの開発(その2)

東京工業大学 環境・社会理工学院

准教授中村 隆志

この度は、昨年度に引き続きEMECS令和6年度若手研究者活動支援制度助成金に採択を頂き、誠にありがとうございます。EMECSのご支援の基、引き続き宮城県南三陸町志津川湾を対象とした本研究を続けられることを嬉しく思っています。
一般的に、志津川湾のような半閉鎖性内湾は、陸域からの淡水の流入や、栄養塩や有機物、土砂等の流入、湾内での生化学反応、外洋水の差し込みなど、様々な影響を受け、複雑な流動環境・水質環境となっていることが知られています。持続可能な水産資源の利用や養殖業を営むためには、これらのプロセスを理解し、湾内環境を精度良く把握することが不可欠です。さらには、近年の人為起源の大気CO2濃度の増加に伴う地球温暖化や海洋酸性化は、特に夏場の湾内水塊の成層化を深刻化させ、底層での貧酸素化および酸性化を深刻化させる恐れがあります。そして、その酸性化の進行は、カキなど炭酸カルシウムの殻を持つ水産資源に深刻な影響を及ぼす可能性が示唆されています。そのような問題意識から、本研究では、陸域―海域―生態系統合モデルを用いた志津川湾デジタルツインの開発を行うことをで、数値シミュレーションによって水産資源の動態も含めた湾内環境や生態系を完全再現し、現在および気候変動下の将来において持続可能な最適な水産資源の利用や養殖の在り方を探索することを目指しています。 志津川湾で興味深いことの一つとして、震災後に、漁港の方々の英断でカキの養殖筏の数を減らすことで、逆にカキ一個体あたりの成長速度が上がり、全体として水揚げ量を上げることに成功した事例が挙げられます。これは、震災前は過密養殖であったことを示しており、また、最適な養殖密度に保つことが如何に重要性であるか示しています。最適な養殖密度の推定のためには、過密養殖による負の影響を適切かつ定量的に評価することが非常に重要です。過密養殖の影響としては、カキの餌資源である植物プランクトンの奪い合いという生物学的な側面と、カキ筏による形状抵抗の増加によって海水交換が滞りやすくなることで、餌資源の枯渇や環境悪化を招くという物理学的な側面の両方の影響が考えられます。今年度は特にこれらの生物学的プロセスと物理学的プロセスの両面をモデル化し、過密養殖の影響を精度良く評価できるようにしていきたいと思っています。

炭素収支の解明を主とした沿岸域の炭素・栄養塩の動態把握
:富山湾をモデルケースとして(その2)

富山大学 学術研究部 理学系

特命助教小林 英貴

昨年度に引き続き、若手研究者活動支援制度助成金に採択いただき、感謝申し上げます。海洋における二酸化炭素吸収の観点から、沿岸域は植物プランクトンの成長に必要な栄養塩が豊富に供給され、海洋生態系による基礎生産量が多い海域であり、大気と海洋の間での二酸化炭素のガス交換を通じて、沿岸域は二酸化炭素の吸収源として機能することが期待されます。本課題では、モデルを用いた数値実験と観測データの双方から、富山湾における炭素を中心とした海洋物質循環の形成・変動メカニズムを明らかにすることを目指しています。 具体的には、海洋物質循環モデルを新たに構築し、富山湾の生態系に関わる栄養塩や炭素などの溶存物質の収支を定量化します。富山湾は、陸域からの河川水や地下水の流入、海底からの地下水湧出などにより、栄養塩が豊富に供給されています。湾内のプランクトンの繁茂の最大 20% は、陸域からの栄養塩供給によって支えられていることが示されています。これらの流入量を観測から制約し、モデルに組み込むことで、陸域からの栄養塩が富山湾沿岸域の生態系に与える影響を評価することを目指します。
昨年度は、海域のモデルの構築を進め、海洋の物理・生物地球化学場の気候値的な分布を計算するとともに、一級河川である神通川からの淡水流入やモデルの空間解像度に対する結果の差異を確認しました。さらに、海域における既存の観測データを収集、整理し、海域の生物地球化学場の月ごとの変化の特徴を、モデルと観測データで比較しました。
富山県においては、令和6年能登半島地震により非常に大きな地殻変動が観測されました。これまでに、県内では地下水位と水質の変化が確認されており、陸域から沿岸浅海域における地下水の流動や栄養塩の供給量や質の変化が懸念されています。また、海底では斜面崩壊の痕跡が確認されており、地下水の湧出地点の変化が示唆されています。このような海底地下水湧出を介した沿岸海洋への栄養塩供給の変化は、沿岸海洋の基礎生産や二酸化炭素フラックスの変化を誘発する。そこで今年度は、陸上地下水と海底地下水湧出の調査や富山湾の観測を行い、過去の観測データと比較することで能登半島地震の影響を把握し、モデルを用いて海域の生態系への影響を評価することを目指します。

タイ湾奥部におけるミドリヤコウチュウの生態と
赤潮発生に伴う環境変化の解明

香川大学 瀬戸内圏研究センター

特命助教中國 正寿

香川大学特命助教の中國正寿と申します。この度は、エメックス若手研究支援に採択いただき、誠にありがとうございます。私の研究テーマは「タイ湾奥部におけるミドリヤコウチュウの生態と赤潮発生に伴う環境変化の解明」です。本研究では、渦鞭毛藻の一種であるヤコウチュウ(Noctiluca scintillans)に着目しています。ヤコウチュウは世界各地の沿岸海域に生息し、頻繁に赤潮を形成します。これらの赤潮は、膨大な生物量を海岸域にもたらし、海水の着色や悪臭を引き起こすことで、漁業、養殖業、観光業に至るまで幅広い被害をもたらします。この問題は、タイ湾奥部のみならず、他の東南アジア沿岸域でも見られており、被害の縮小が求められています。しかし、温帯域の赤色のヤコウチュウについては多くの研究が存在する一方で、熱帯域のミドリヤコウチュウの生態に関する情報は限られています。タイ湾におけるミドリヤコウチュウの発生は、2月から4月にかけて奥部の沿岸海域に集中し、5月から9月には、その領域がタイ湾奥部の中央域にまで広がります。これらの海域は貧酸素水塊が形成される海域と一致しているため、ミドリヤコウチュウ赤潮がタイ湾奥部の貧酸素水塊形成の要因である可能性が示唆されています。しかしながら、この仮説を裏付ける科学的証拠はまだ得られていません。その理由の一つとして、自然環境におけるミドリヤコウチュウの発生過程における生態学的特徴と組成が十分に解明されていないことが挙げられます。そこで本研究では、自然環境下におけるミドリヤコウチュウの基礎組成の特徴を調査し、赤潮の発生前から発生後に至るまでの高密度観測を実施します。これにより、ミドリヤコウチュウの赤潮発生機構を理解するための基礎となる現場観測データをモデルへ提供するとともに、そのデータセットからミドリヤコウチュウの赤潮発生過程の解明を試みます。この研究を通じて、ミドリヤコウチュウ赤潮の発生メカニズムとその環境影響をより深く理解し、将来的には効果的な対策の開発に貢献することを目指しています。

潮汐と海底湧水を反映した干潟の基礎生産過程
:機械学習と連続観測によるアプローチ

熊本県立大学大学院
環境共生学研究科環境共生学専攻

博士後期課程 大学院生尾崎 竜也

この度は、EMECS令和6年度若手研究者活動支援制度助成金にご採択を頂き大変ありがとうございます。私は、熊本県立大学大学院の環境共生学研究科の博士後期課程に所属し、日本最大の干潟面積を誇る緑川河口干潟を対象に、干潟の基礎生産者の定量に取り組んでいます。干潟は生物生産が高い生態系サービスのホットスポットです。陸と接する干潟は開発されやすく、全世界の干潟は1984年から現在までに約16%が消失しています。消失しつつある干潟の保全には、干潟の生態系機能の根幹となる基礎生産者(植物プランクトンと海底に生息する底生微細藻類)を正確に定量する必要があります。干潟の基礎生産量の主な制限要因は光とそれを遮る海水の変動(潮汐)です。しかし、従来の基礎生産量の見積もりは、潮汐が基礎生産者に与える影響を無視しており、干潟の基礎生産量を1年以上の長期間定量した事例はありません。
そこで、私は従来の野外でボトルを培養する現場法に対して、太陽と同程度の光量の人工光源を使用する室内実験法による基礎生産量の定量方法を確立し、2年に渡る水質の連続観測と組み合わせた新たな基礎生産量の高解像度モニタリング手法を構築しました。一般に潮汐が左右する干潟の干出時間は、夏季は昼間(昼潮期)、冬季は夜間(夜潮期)であるため、昼潮期は底生微細藻類にとって光合成に適しており、夜潮期は光合成に不適であると考えられます。そのため、確立したモニタリング手法を用いて干潟の基礎生産量を高精度に長期間定量することで、夜潮期から昼潮期にかけて、日中の干出時間の増加に伴い、底生微細藻類の基礎生産量と相対的重要性が向上することを検証します。また、夏は光が豊富な一方、干出時に底生微細藻類は乾燥ストレスに晒されます。近年、世界の沿岸域で海底湧水による栄養塩の供給が、基礎生産量を増加させることが報告されています。これを踏まえて、私は干出時に海底湧水が堆積物表面の湿潤状態を維持し、栄養塩類も豊富に供給することで、底生微細藻類の光合成活性は顕著な上昇を示すという仮説を導出しました。そのため、本研究では干出時に海底湧水が有る場所(海底湧水区)と無い場所(対照区)の底生微細藻類の光合成活性を測定し、比較することで仮説を検証します。そして、本研究で得られる結果から潮汐と海底湧水を考慮した干潟の基礎生産量の推定モデル構築を目指します。

事務局・連絡先

(公財)国際エメックスセンター
担当:大輪
〒651-0073
神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5番2号
TEL 078-252-0234 FAX 078-252-0404
E-mail owa @emecs.or.jp